トリチウム水放流

 

福島第一原発を見学すると、印象的なのはサイトを埋め尽くす1000基近い貯水タンクだ。貯水量は約100万トンで、毎日7000人の作業員がサイト内の水を貯水タンクに集める作業をしている。その水の中のトリチウム三重水素)が浄化装置で除去できないからだ。
これは水素の放射性同位体で、ごく微量のベータ線を出すが、人体に害はないので「汚染水」ではない。最近はマスコミも「トリチウム水」と呼ぶようになった。世界ではトリチウムは薄めて流すのが普通で、日本でも他の原発はそうしているが、福島第一だけができない。それは科学的な理由ではなく、地元の同意が得られないからだ。

経産省の「トリチウム水タスクフォース」は、他の方法も検討した上で、2016年4月に「希釈して海洋放出」することがベストだという報告書を出した。しかし経産省には処理方法の決定権がないので、これは単なる意見である。

原子力規制委員会の田中俊一前委員長は昨年、海洋放出の方針を示し、東電の川村会長も7月に「大変助かる。委員長と同じ意見だ」とコメントした。これに福島県漁連が「裏切り行為だ」と反発し、田中氏も「東電は地元と向き合う姿勢がない」と強く批判し、問題は暗礁に乗り上げてしまった。

しかし東電が地元と向き合えば、問題は解決するのだろうか。私が福島第一を見学したとき「薄めて流したらどうですか」と東電の幹部に質問したら、彼は「それは当社からはいえない」という。トリチウム水を流すこと自体は経営判断として可能だが、事実上の「国営企業」になっている東電は、国の方針なしで意思決定はできないのだ。

では誰が決めるのだろうか。田中氏は「原子力規制委員会は規制への適合性をチェックしているだけだ」という。彼の後任の更田委員長も今年1月、地元との話し合いで「意思決定をしなければならない時期に来ている」と述べたが、誰が決定するのかは明言しなかった。

更田氏によると「原発内に貯水できるのはあと2、3年程度で、タンクの手当に2年以上かかる」という。したがって今年中に結論を出さないと、貯水タンクが足りなくなる。今の状態でも地震が来たらタンクが破壊され、大事故が起こるおそれもある。

東電が決められず、規制委員会も決められないとすれば、委員会を統括する内閣が決めるしかないが、吉野復興相は風評被害を理由に放出に反対した。あとは安倍首相の決断しかない。オリンピック誘致のとき彼が約束したように「政府が前面に出て」福島の処理を進めるしかないのだ。残された時間は少ない。

 

福島第一原発をグーグルで見ると、丸いタンクが見える。

震災後、急増したため以前漏れたことがある。原子炉の冷却する循環水で、他の物質は除去できるが、「トリチウム」だけは分離できない。そのため、ため込むことになる。

そのため、人体に害が無いということになっているので、世界では薄めて海に流してしまうのが常識である。

しかし、日本ではそれができない。地元の同意が必要であるから。

早急に、解決しないとタンクの製造も限界となる。

海に流してよく、地元の理解が得られないなら、タンカーで公海まで運び放流したらよいのでは?

コストがかかるのなら長いホースを伸ばしてタンクが増えない程度に太平洋に流してしまえばいいのに。

安易な考えだが。